悩める東大生の休学タビ記録

就活に悩んだ東大生が、やりたいことをみつけ、休学し海外で一人旅をする。そんな旅の記録。

「宗教・軸・正義・価値観」クアラルンプール|東南アジア旅エッセイ⑭

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僕はおばちゃんから説明を聞いている間、そのおばちゃんの柔和な笑顔に惹きつけられていた。そこには僕と違う価値観があるのかもしれないけれど、その価値観はこのおばちゃんにこれだけの笑顔をもたらしている。

 

 

 

《前回のあらすじ》

クアラルンプール行きのバスを逃してしまった僕はヒッチハイクに挑戦するも失敗。

マレーシア人カップルにお金を握らされ、その優しさに屈服した僕はキャメロン・ハイランドでもう一泊してからクアラルンプールに出直すことにした。

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1. クアラルンプール

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キャメロンハイランドからのバスは山をくねくねと下った後で高速に入り、お昼過ぎにマレーシアの首都であるクアラルンプールに到着した。ひとこと言っておくと、昨日僕に怒鳴ったバスターミナルのおばちゃんは翌日も不機嫌だった。多分不機嫌が標準装備なのだろう。

 

バスは都市的な道路が首都高速のように入り組んでいる場所に停車した。あたりには綺麗な高層ビルが林立していた。それだけでもう今までの東南アジアとは経済的な差を感じた。ちなみに他の国についてもう少し詳しく説明すると、ラオスカンボジアはまだまだ発展が遅れていて、タイは都市部が発展している一方で田舎の方まではまだ開発が回っておらず、ベトナムハノイホーチミンが両極に位置していること、国の形が細長いことからわりと全体的に発展している印象を受けた。

正確なGDPの数値などはわからないけれど、実際に僕が目で見た範囲内のインフラ整備のみに着目すれば、マレーシアは群を抜いているように思われた。

 

あまり歩行者用の空間ではなかったので、横断歩道なき道を慎重に渡りながら彷徨い歩いていると、KL Sentralという駅に出た。複数の路線が乗り入れている大きな駅で、品川駅みたいに綺麗だった。

 

通常なら一駅分など当然のように歩くのだが、そもそも電車自体に乗ってみたかったので、自動販売機でプラスチックでできたコインみたいな形のトークンを購入しLRTに乗り込んだ。(専門なので付言しておくと日本で言われる路面電車としてのLRTではない)

 

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Pasar Seni(パサール・セニ)という中華街のある駅に着くと、僕はあたりを見学しつつ宿を探した。綺麗な町並みと対照的に中華街のアーケードには偽ブランドの時計やカバンを売る店が結構あって、「そこは他の東南アジアと大して変わらないんだな」と一人でほくそ笑んだ。僕はカンボジアで買ったBeatsの白いヘッドフォンを首にかけていた。もちろん偽物だ。

 

 

 

2. 宗教・軸・正義・価値観f:id:frogma:20181219044955j:image
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クアラルンプールと言えばペトロナスツインタワーとかバトゥ洞窟が有名だと思う。ペトロナスツインタワーの下に入っているショッピングモールには本物のブランド店が入っていて久しぶりに先進国に来た感じがした。正確にはクアラルンプールの外というのもあると思うけれど、意外に知られていないのではないかと思うのが、ブルーモスクとピンクモスクだ。僕はある日ブルーモスクに行くことにした。

 

ブルーモスクというのは正式名称ではなくて、本当はなんだか覚えにくい名前がちゃんとある。それがブルーモスクと呼ばれるのは、モスク全体が青色で統一されているからだ。また世界で4番目に大きいモスクでもあるそうだ。

 

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パサールセニ駅前のロータリーから750番のバスに乗って40分弱行ったShah Alamというバス停で降りた。 

少し歩くとブルーモスクの上部が少し先に見えて来た。気持ちの良い青空に映える透き通った青色と天を突き刺す四つの尖塔に心を打たれた。

 

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敷地内に入ってモスクを正面から見られる場所まで来ると、僕は夢中でシャッターを切った。

ふいに後ろから英語で「お一人ですか?」と声をかけられた。

ブルーモスクにはイスラムについて無料で説明してくれる場所があると聞いていた。僕が写真を撮っていた場所はちょうどその施設の真ん前で、声の主はその施設で働く60歳くらいの女性だった。

 

その施設では無料でビスケット(レーズンが入っている少し柔らかめのもので結構美味しかった)と冷えた水をもらえた。外は日差しがとても強く気温も高いから、冷えた水は本当にありがたかった。

 

布教活動と言えば布教活動をしている場所なのだが、あまり押し付けがましいところや怖いところはなかった。むしろイスラム教についての正しい知識を知ってもらい、イスラム=テロのイメージを払拭できればそれで良い、というスタンスらしかった。イスラムの成り立ちや根本的な教えについて大きなパネル展示の間を一緒に歩きながら英語で丁寧に説明してくれた。

アダムとエバの創世記から始まって、イエスを経由し、ムハンマドに到るまでのざっくりとした経緯。ムハンマド預言者という立場について。ユダヤ教およびキリスト教との差異。教義の概説やサラートという礼拝について。イスラム教徒の個人資産についての考え方。メッカについて、などなど。

 

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なんの宗教も信仰していない人を含めてさえ、人間は何かの価値を理由無しに信じているはずだと僕は思う。例えば僕は「平和」に対して価値を感じているけれど、それはなぜかと言われても(少なくとも言葉で説明しうる)理由などないし、それは理由無しに信じていると言わざるを得ないだろうと思う。そういう意味で人は自分の中に自分オリジナルの宗教(この場合「平和教」とでも言うべきか)を持っていると言えるかもしれないし、それはもっと単純に、人は自分なりの軸や正義や価値観を持っているということと一緒だと思う。

 

宗教は僕らに「これこれは価値があることだ」とパッケージで教えてくれるものであって、それは特に自分ではもはや何にも価値を見出せなくなった人にとって生きる希望になり得るはずだ。でも僕個人の私的範囲内で言うとすると、そのように人生に絶望しない限りにおいては、自ら価値を見出していくことで、自分オリジナルの宗教・軸・正義・価値観を構築し、それを絶えることの無い自己検証の下でアップデートし続けていく方が僕は好きだ。

 

集団がみんな同じ宗教を無条件に信じることで達成しやすくなる良いことも存在するだろう。例えば人種間の平等や富の再分配などは、無条件でそれが良いことだと集団みんなが信じている場合の方が達成されやすいだろう。一方でわざわざ「人種間の」と言ったのは、その代わりに男女間の差別があったりするからで、だからこそそのパッケージを丸々全面肯定することは難しい、というのもある。

 

 

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僕はおばちゃんから説明を聞いている間、そのおばちゃんの柔和な笑顔に惹きつけられていた。そこには僕と違う価値観があるのかもしれないけれど、その価値観はこのおばちゃんにこれだけの笑顔をもたらしている。

 

少なくとも信者にとっては一つの幸せの形である宗教に対して頭から「私は信じません」などと拒絶する行為は、他人の価値観に対する理解を頭から拒絶することとほぼ同義ではないだろうか。無宗教者の方が賢いなんて思うのは大間違いだ。

 

自分の中で軸を持ちながらも、これから更に多様化していくだろう価値観に対してどう振る舞っていくのかが重要だと僕は旅からしみじみ学んだ。

 

 

 

《あとがき》

宗教や政治やジェンダーって結構タブー視されている話題ですよね。友達とはあんまり話さない。

でも一方で誰とも話さないことによって、自分が気づいていない自分の中の偏見や差別意識は誰にも指摘されないまま育っていってしまう。

それってタブーなんて言っている場合か、と思うのです。

(もちろん社会的な立場を背負った状況での思慮に欠けた発言はどうかと思うけれど。)

 

僕は理系なんですけど、理系の人の中には、歴史や宗教についてほとんど知識がなかったり、特に宗教については科学志向が拍車を掛けて頭から非論理的だと決めつけてしまったり、という人がちらほら見受けられるように思います。

これは社会や教育の問題だと思うのですが、社会を先導していくであろう東大生ですらそうである(当たり前ですが全員ではありません。あくまで、ちらほら、です。)ということを重く受け止めなければいけないと僕は思います。

 

ちょっと真面目なお話になっちゃいました。

でも実際こういうこと考えながら旅してるので…。

 

なんかもっと気楽でアホな話してくれ、と思う人がいたらコレ↓とか読んでみてください笑

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 続きはこちら↓

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