悩める東大生の休学タビ記録

人生に悩んだ東大生が、休学して世界中を旅した経験を綴ったエッセイブログ。

中南米

「伝染する熱量の揺れ」ハバナ③|中南米旅エッセイ14

彼が担当するメロディに入る。ソロパートだ。静かな緊張と、若さゆえの自信から、息は僅かに震えているように聞こえる。でも力強い。高音も安定している。むしろその僅かな震えが、フロアの空気を揺らしている。そして空気の振動が、観客の内部を揺らし始め…

「アジア人差別?」バラコア|中南米アジア旅エッセイ13

車内には観光客は1人もおらず、全員現地住民だった。座った瞬間嫌な感じがした。車内のあちこちからニヤニヤした顔が向けられ、「Chino, Chino」と呼ばれた。アジア人差別を感じた。無視して耐えた。

「ピンチ!復学届!」サンティアゴ・デ・クーバ|中南米旅エッセイ12

もし、カード会社から電話がかかってきていなかったら、Wi-Fiにつなぐこともなく、催促のメールには気づかなかった。もし、そのタイミングで知り合いに会わなかったらパソコンを借りられなくて復学届は書けなかった。さまざまな偶然の連携で、見事にピンチを…

「革命と螺旋階段」トリニダー|中南米旅エッセイ11

塔に登って、楕円形に切り取られた壁から、遠くまで続くカリブ海を眺めた。イヤホンをつけて「彼こそが海賊」を流した。初めて海外に行ったのは、小学6年生でハワイだった。海の見えるホテルのバルコニーから、iPodを片手に「彼こそが海賊」を聞いた。当時12…

「正しさが暴走するとき」ハバナ②|中南米旅エッセイ10

正しさが暴走するとき。正義の名の下に、あるいは経済的合理性の名の下に、本当は正しくない何かが正しいとされてしまったとき。社会は真っ暗闇の中、ブレーキをかけることなど考えもせず、崖へと続く道をアクセル全開で進む。次に社会が止まるのは、崖から…

「ヘミングウェイの憂鬱」ハバナ|中南米旅エッセイ9

「老人と海」は僕はあまり好きではない。それよりも「日はまた昇る」とか「武器よさらば」の方が好きだ。でもそこには共通した感覚がある。僕がヘミングウェイの小説を読んだ後に想うのは、いつも一人の人間の後ろ姿だ。

「別物」トゥルム・カンクン|中南米旅エッセイ8

ピンクラグーン 僕らのしている「旅」と彼女たちのしている「旅行」は、別物なのだと思った。

「恋・ドストエフスキー・盗難未遂」パレンケ|中南米旅エッセイ7

「その目は、その目はまるで…」と、心が呟いていた。そして次の瞬間、僕はその言葉の後に何が続くのかを悟った。自分が何を考えているのかわかってしまった。僕は全身の力を抜き、再び席に座った。彼女のことを引き止めるのはやめた。

「カルチャーショック」サンクリストバル・デ・ラス・カサス|中南米エッセイ6

でもきっとそれは、羨ましいと感じている自分の本音を誤魔化すための言い訳だったのだと思う。

「はだか」シポリテ|中南米旅エッセイ5

よし自分も脱ぐか、と思って思い切って水着を脱いだ。

「たなばた」オアハカ|中南米旅エッセイ④

旅で得られるもっとも重要な経験の一つは、こういう何気ないものなのかもしれない。 年齢も性別も職業も関係なかった。そういう経験が一つの心象風景となって、今の僕をしっかりと裏から支えてくれている。その風景は僕にとって、好きな時に帰れる場所なのだ…

「世界は僕を泣かせた」サンミゲル・デ・アジェンデ|中南米旅エッセイ③

それは、突然のことだった。 身体中に鳥肌が走った。 僕は気がつくと、涙を流していた。 サンミゲル・デ・アジェンデ

「生活の灯火」グアナファト|中南米旅エッセイ②

そのモザイクタイルの一つ一つに人々の生活が宿っているのだと思うと、人々の営みの歴史の重さがひしひしと伝わってくるようだった。

「テンプレートに込められた非テンプレート」メキシコシティ|中南米旅エッセイ①

シウダデラ市場にて 空港ビル内に入ると、塩素の強い匂いに混じって、ほのかに異国の匂いが漂っていた。僕はそれを懐かしく感じた。小学6年生の時に、母親に連れられてニューヨークに降り立った時の思い出がフラッシュバックした。もう11年前のことだ。僕は…