「ちょっとしたお話2つ」ルアンパバーン | 東南アジア旅エッセイ④
ある晩ふと気になって、おっちゃんに「お昼は何の仕事をしているの?」と聞いた。
《前回のあらすじ》
タイからラオスに向かう途中のバスで、僕はひたすら自分の人生を振り返った。
1. サンドイッチ売りのおっちゃん
ルアンパバーンでは夜になるとメインストリートにナイトマーケットが出る。日が暮れ始める頃、人2人すれ違えるくらいの通り道を2筋残して、上から見たらまるでタイルを丁寧に貼り付けていくみたいに赤や青色の出店のテントが準備されていく。
テント列を抜けた辺りにはテントこそないものの、フルーツシェイクやサンドイッチの屋台が出る。ラオスはフランスの植民地だったから、フランスパンを使ったサンドイッチがとても美味しかった。ちなみにコーヒーもとても美味しくて、特に、泊まっていた宿の近くにあったマッサージ屋のおばちゃんが片手間で作っているようなコーヒーの味は衝撃的な美味さだった。ビニール袋に氷をたくさんと甘くしたコーヒーを入れて口を輪ゴムで縛る。その後ストローを一本袋に刺して、紙袋に入れたうえでくれる。
少し話は脱線したけれど、話はコーヒーではなくてサンドイッチだ。僕には行きつけのサンドイッチ屋台ができた。毎晩同じおっちゃんだった。10000キープ、約150円弱だったと思う。
ある晩ふと気になって、おっちゃんに「お昼は何の仕事をしているの?」と聞いた。
するとおっちゃんは、時々トゥクトゥクの運転手をするが仕事は基本毎晩の屋台だけだ、と言った。お昼は家族と過ごすのだという。子供の話をするおっちゃんの微笑を、僕はちょっとしんみりしながら見つめていた。
もしかしたらおっちゃんには土日祝日の休みがないのかもしれないけれど、それでも日本での生活のように朝から晩まで会社で働くというのは本当は家族と生活するための必要条件ではないんだろうなと僕は思わずにいられなかった。
2. 初めての日本人
ルアンパバーンの町から少し離れたところにクアンシーの滝という滝がある。滝から少し下流のところに、エメラルド色のプールみたいになってあるところがいくつかあって泳ぐことができる。
僕は町のローカルな旅行代理店のお姉さんにお願いして、滝までの車を手配してもらった。
翌朝バン(確かハイエースだったと思う)に乗り込むと、そこには中国人のお姉さんとイギリス人の19歳の女の子が2人、それから確か25歳のフランス人の女の子が1人いた。ちょっと道がでこぼこしていたわりに、バンは中々なスピードを出していたから中国人のお姉さんは酔ってしまったみたいだったが、僕含めた残りの4人は談笑していた。
イギリス人の女の子の1人が僕にこう言った。
「私日本人に会ったのって初めて!」
僕は軽く衝撃を受けた。初めて話したという意味合いだと思うのだけれど、それでも日本人なんて世界中のどこにでもいるような気がしてしまっていた。僕が日本人の代表なわけでもないし、僕の印象が彼女の中で「日本人の印象」に拡大されてしまうかどうかはわからないけれど、そうは言ってもなんとなく背筋ののびる思いがした。
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