悩める東大生の休学タビ記録

人生に悩んだ東大生が、休学して世界中を旅した経験を綴ったエッセイブログ。

「伝染する熱量の揺れ」ハバナ③|中南米旅エッセイ14

f:id:frogma:20210515182213j:plain

 

彼が担当するメロディに入る。ソロパートだ。静かな緊張と、若さゆえの自信から、息は僅かに震えているように聞こえる。でも力強い。高音も安定している。むしろその僅かな震えが、フロアの空気を揺らしている。そして空気の振動が、観客の内部を揺らし始める。どよめきが感嘆に変わっていく。キレイだ。僕には、彼が遊んでいるように見えた。誰よりも楽しんでいるのだ。

 

続きを読む

「アジア人差別?」バラコア|中南米アジア旅エッセイ13

f:id:frogma:20210219001946j:plain

 

車内には観光客は1人もおらず、全員現地住民だった。座った瞬間嫌な感じがした。車内のあちこちからニヤニヤした顔が向けられ、「Chino, Chino」と呼ばれた。アジア人差別を感じた。無視して耐えた。

続きを読む

「ピンチ!復学届!」サンティアゴ・デ・クーバ|中南米旅エッセイ12

f:id:frogma:20210217013548j:plain

 

もし、カード会社から電話がかかってきていなかったら、Wi-Fiにつなぐこともなく、催促のメールには気づかなかった。もし、そのタイミングで知り合いに会わなかったらパソコンを借りられなくて復学届は書けなかった。さまざまな偶然の連携で、見事にピンチを乗り切った。

 

続きを読む

「革命と螺旋階段」トリニダー|中南米旅エッセイ11

f:id:frogma:20210213184307j:plain

 

塔に登って、楕円形に切り取られた壁から、遠くまで続くカリブ海を眺めた。イヤホンをつけて「彼こそが海賊」を流した。初めて海外に行ったのは、小学6年生でハワイだった。海の見えるホテルのバルコニーから、iPodを片手に「彼こそが海賊」を聞いた。当時12歳。今や23歳だった。自分自身、前に進んでいるのか、後ろに進んでいるのかわからなかった。

 

続きを読む

「正しさが暴走するとき」ハバナ②|中南米旅エッセイ10

f:id:frogma:20210212012758j:plain

正しさが暴走するとき。正義の名の下に、あるいは経済的合理性の名の下に、本当は正しくない何かが正しいとされてしまったとき。社会は真っ暗闇の中、ブレーキをかけることなど考えもせず、崖へと続く道をアクセル全開で進む。次に社会が止まるのは、崖から落ちたあとだ。

 

続きを読む