番外編エッセイ「夏空の記憶」
夏という季節はどうしてこうも郷愁を誘うのだろう。
どこまでも続くような空の向こう側から
夏休みの記憶が降ってくるからだろうか。
あ、そうか。去年の夏は日本にいなかったのか。
空を見上げる。
同じように空を見上げていた去年の自分が蘇る。
僕はカンボジアにいたのだった。
そして数日後に始まるダイビング講習を受けに、タイに向かっていたのだった。
毎日が楽しくて、毎日に期待していた自分。
満面の笑みをした僕自身の姿が、まぶたの奥に思い出される。
今の僕はどんな顔をしているのだろうか。
あの夏と同じくらい、今年の夏も笑えるだろうか。